日中友愛エンタメ大使(自称)の小松拓也です。
この記事の目次
芸能界から見る中国市場について
この度、横浜東ロータリークラブにて卓話をさせて頂くご機会を頂きました。
卓話のテーマは「芸能界から見る中国市場」。
その内容をブログでも数回に分けてお伝えしていきたいと思います。
日本の抱える諸問題1!人口減少
まず冒頭でお伝えしたのが現在の日本の抱える諸問題です。
上のグラフの通り、2020年の日本の総人口は1億2532万人と推定されていますが、2055年には1億人を割り込むように推移していくと考えられています。
注目すべきは今から10年後の2030年の日本の総人口が1億1913万人と推定されており、現在よりもおよそ1300〜1400万人の人口減少が予測されている点です。
現在九州の総人口がおよそ1320万人超ですので、今からたった10年も経過をするだけで九州の総人口分に相当する人口が日本から減少しているという計算になります。
日頃から人口減少問題は様々なところで目や耳にする話ですが、このような角度から改めて考えてみると非常に深刻な問題なのだと感じてなりません。
日本の抱える諸問題2!少子高齢化と労働人口減少の加速化
また、人口減少に伴い超少子高齢化も大きな問題です。
働く労働人口は減少の一途をたどっていくものの老年層の割合は上グラフのような形で増加していくとされます。
2036年には国民の3人に1人が65歳以上を迎える時代に突入すると試算されている実態です。
日本の抱える諸問題3!学力の低下
また、学力においても日本は諸外国に差をつけられ始めている状況です。
イギリスのタイムズ・ハイヤー・エデュケーション発表の2019年世界大学ランキングのトップ200にランクインしている日本の大学が2校なのに対し、中国は7校。
お隣の韓国は人口5千万人に対して5校が選出され、香港に至っては739万人の人口に対して5校が選出されている状況です。
日本の抱える諸問題4!若者の内向き志向と留学者の伸び悩みによる国際競争力低下
一方、グローバル経済の加速化が目まぐるしく進んでいる国際情勢の中で、諸外国の実態や情勢を熟知し、海外の人々やコミュニティとのパイプを深く構築していくことの出来る人材の確保は日本にとって非常に重要なポイントと言えるでしょう。
その土台を作る上でも外国の言葉や文化を勉強し、日本の外側から見る国際情勢やその中で日本の置かれている状態や状況を客観視出来る能力を磨き、現地の人々との交流を深めることが出来る海外に造詣が深い日本人を育てていくことは大きな意味を持つことと言えるでしょう。
日本人留学生や日本人海外在留者はその一つのバロメーターです。
では現在、日本人の海外留学者数はどの程度いるのかを上のグラフを見ながら確認してみてください。
統計方法に変化があった経緯もあるので必ずしも正確なデータとは言えないようなのですが、グラフからはある程度の留学生数の推移を把握出来ます。
こちらのグラフを参考に比較をしてみると2004年の8万2945人をピークにその後日本人の海外留学者数は減少し、現在は年平均およそ5万6千人が海外留学をしている実態です。
近年は再び留学者数が微増している実態があるようなのですが、上グラフの留学生の平均留学滞在期間の割合が示す通り、大半の留学生の留学期間は1ヶ月未満の短期留学がほとんどです。
1年以上の留学者数に至っては2千人前後でほぼ横ばいの割合を刻んでいる状態と言えます。
例えば僕は海外在住経験が合計10年以上ありますし、海外在住しながら活躍する沢山の仲間も知っています。
そういった経験値や見識から判断し、1年程度の留学期間で学べる言語習得や現地コミュニティとのネットワーク及び信頼関係の構築は非常に限定的にならざるを得ないと考えます。
ましてや一ヶ月未満の短期留学から得られる資源はなおさら限定的でしょう。
ではここで中国人の海外留学者数に目を向けてみます。
2010年以降、中国人の海外留学者数は増加の一途をたどっており、2018年には66万2100人が海外留学をしている現状です。
正式な統計を示した信憑性のあるデータは探すことが出来なかったのですが、中国のネット上で示されていたあるデータによると、中国人の海外留学生の在留期間は平均で36ヶ月というデータがありました。
中国では近年「中国のシリコンバレー」と評され、イノベーションが次々と生まれている街として深センが日本でも話題になっていますが、深センのように最先端の技術やテクノロジーが日々進化している街においても海外から最先端の技術や知識を吸収して中国へ帰国した優秀な人材がイノベーションの加速化に大きく貢献していると言います。
帰国子女が中国経済に大きな利益を還元する流れをもたらし、近年の中国経済の発展に大きく起因していると考えられるのです。
また、深センに集まるものは豊富な資金や技術、帰国子女だけではありません。
世界中からビジネスチャンスを求めて居住する多くの外国人技術者も深センには集まっています。
最近、WBSで流されていた深センのイノベーションについての特集を目にすることがありましたが、インタビューに答えていたある欧人が「何故深センに会社を興し、深センにビジネスや居住の拠点を移しているのか?」という質問に対して非常に刺激的な回答をしていたのが個人的に印象的でした。
「ヨーロッパならば実現に1ヶ月かかるものが、この街(深セン)ならば1週間で実現出来る!」と答えていたのです。
現在の中国の変化や実態を如実に表したものだと感じてなりません。
一方で日本はと言うと、大幅な人口減少や生産量の低下が予測される中でそれらを補填していく為にも今後中国をはじめとした諸外国へ更なる販路を拡大していく必要が急務ですし、それが実現出来なければ国民一人あたりの生活水準を現在と同等に保っていくのが難しくなる可能性があります。
その際に活躍が見込まれる海外とのコネクターとなり得る日本人の海外留学生数の伸び悩みは上記諸問題などとセットにして日本が真剣に向き合っていかなくてはならない憂慮すべき問題なのだと強く感じます。
世界的なプラットフォームは米中に集中
また、今後の時代(現在すでにですが…)はAIや5Gなどテクノロジー全盛の時代だと言われています。
アメリカのGAFAや中国のアリババグループやテンセントをはじめとした情報を取り扱う企業が世界的にもシェアを持つようになった一方、日本はITのグローバル市場で優位に立つことが出来ていない状態です。
2019年度の日本のAI関連予算は前年度比1.5倍の約1200億円と発表されていますが、この予算計上をもってしてもアメリカの2018年度同予算5000億円や中国の2018年度同予算4500億円には4倍前後穴を開けられている状況です。
新経済連盟の独自調査の発表によると、日本のインターネット広告の50〜70%(約1.5兆円)、音楽定額配信サービスの75%以上(約570億円)の売り上げが米中などのプラットフォームに流れているとのことです。
ECにいたっては外国勢シェアは25%を締め、約7.2兆円が海外へ流出している計算になるようです。
世界の2大IT大国と呼ばれるアメリカと中国にこのような形で日本は完全にシェアを奪われているほか、その打開策に本気で向き合っていかなければ今後益々の国力低下を招くことは火を見るより明らかです。
こういった日本の置かれた様々な状況を我々日本人はただ憂いているだけでいいのでしょうか?
当然そんなわけにはいきませんし、世界と今後も対等に渡り合っていく為にも世界情勢や世界のトレンドにも目を向けて研究していかなければ対応策すら考えられません。
次回の記事では中国の芸能事情などと照らし合わせながら皆さんと共に日本が向き合っていくべき打開策を考えていきたいと思います。
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