日中友愛エンタメ大使(自称)の小松拓也です。

横浜東ロータリークラブで卓話させて頂いた内容をシリーズでお伝えして来た「芸能界から見る中国市場」のシリーズ記事になります。

 

前回の記事では「日本のモノ作り」の技術や在り方が目まぐるしく変わる国際情勢の中でその優位性を失いつつある懸念材料をお伝えした上で今後の未来を見据えた新たな日本ブランドのブランディング再構築の必要性を問題提起させて頂きました。

そしてその問題を考える上でヒントになる要素が「爆買い」にあるのではないか?と思うのです。

 

爆買い現象と日本のエンタメの関係性

2015年の流行語に選ばれるほど話題となった中国人旅行客の「爆買い」は2019年現在、モノからコトへとその消費の動向を変化させていると言います。

 

中国人の訪日旅行者数は年々増加の一途をたどっており、2018年度の中国人訪日旅行者数は838万100人に達しました。

2015年以降は毎年最も多く日本を訪問している外国人が中国人なのです。

 

最近は一時期の爆買い現象の勢いが収まったとは言え中国人の日本での消費能力は依然として高く、1日あたりの旅行総支出額(2018年度統計)は「34.648円/1人」であり、同一位のイギリス38.622円、同2位の香港37.614円に次ぐ3番目に高い水準となっています。

言うまでまなく中国人の訪日旅行客総数の分母は他国と比べて突出している為、日本人にとって近年最もお金を落としてくれる上客は紛れもなく中国人であると言えます。

 

また、観光庁の2018年度発表の統計によると中国人訪日旅行客の日本への訪日回数のうち44.5%が2回以上のリピーター客であることが分かっています。

つまり現在日本を訪れる中国人旅行客の約二人に一人はリピーターということになります。

 

そしてその内訳の6〜7割が個人旅行で日本を訪問している実態なのです。

中国ビジネス最前線2018!日本を訪問するインバウンド旅行者の秘密は日本人が知らない「文創」にあったで説明している通り、個人ビザを取得した中国人の海外旅行者は世界全体に対し44%(2017年統計)という取得率の為、これに照らし合わせると日本へ個人旅行をする中国人の割合は突出している状態が一目瞭然であり、日本旅行及び食事や観光、各種サービスなど日本コンテンツの人気の潜在性がどれほど高いかが伺い知れます。

 

つまり「爆買い(モノだけでなくコト消費を含む)」と総称される中国人の日本での消費のおよそ半分は、二度以上日本を訪問しているリピーターによって支えられており、一回の旅行の体験では味わいきれなかった日本の各種魅力を探しに再訪日する個人旅行者がメインターゲットであると捉えることが出来ます。

 

こういった中国人はいわば「日本ファンと化した中国人(もしくはその予備軍)」であると考えることが出来るわけで、「彼らが日本に何を求めて何度も訪日するのか?」と深掘りして考えてみることは長期的な中国人とのビジネスを構築していく上で大きなヒントになるだろうと考えます。

 

何故中国人は日本が好きなのか?

そもそも何故中国人は日本が好きなのか?

何故日本へこんなにも沢山の中国人が訪問するのか?

何故爆買いと呼ばれるほどの消費を日本に生み続けるのか?また、その魅力はいったいどこにあるのか?

(爆買いの在り方や形は随時変化しているので、「中国人の日本コンテンツへの総消費量=爆買い」と定義して話を進めます。)

 

これらの「何故」を考える上で1つのヒントになるのが映画やドラマ、音楽やアニメや漫画などといったエンターテイメントコンテンツだと個人的に考えます。

 

もちろん純粋に日本の食事や文化、景色や風土やサービスが好きという中国人も大勢いると思いますが、それを踏まえてもエンタメコンテンツが与える影響は決して少なくないと多数の中国人と長年付き合って来た中で感じています。

日本コンテンツが秘めた潜在力を誰よりも近い現場で長年見て来た確信

僕の周りには大勢の中国の友人がいますが、歴史や政治などの問題を踏まえても「なおかつ日本や日本のモノが好きだ」という中国人を僕は昔から大勢知っています。

それは現在のように中国人への個人旅行ビザが緩和されて大勢の中国人が旅行で日本を訪問するようになる随分前からそうであったし、爆買いという言葉がメディアを賑わせるようになるかなり前から一部の中国人の間で日本のモノが人気であった実態を僕は知っていたのです。

 

つまり23年前より中華圏に根差して長い間現地での暮らしも伴って来た僕にとっては中国人の中にも沢山の「日本好き」がいることを現場レベルの肌感で知っていたのです。

例えば僕は2007年に上海の人気テレビオーディション番組に出演したことがきっかけで一時期は「上海で一番有名な日本人」と紹介されるほど中国人から支持されることになりました。

 

2007年と言えば前年の2006年に中国の複数都市で大規模な反日デモが起こった翌年というタイミングでした。

僕はそのような状況下でオーディションに参加をし、番組視聴者がリアルタイムで携帯のショートメッセージを送る形で出場者が得票数を競うルールのもと、多くの中国人に投票してもらって約8万人の応募者の中、トップ20に入って一躍有名になることが出来ました。

 

僕を応援してくれたファンの中には大勢の日本のエンタメコンテンツファンが存在し、SNSなどを通じそういった中国人が子供の頃から日本のアニメやドラマ、音楽などに触れていることを僕は知るのです。

 

そういった「日本ファン」の存在がいなければ僕はオーディションで注目を浴びることがなかったかもしれないし、少なくとも小松拓也一人の力では中国での芸能活動は間違いなく成り立っていなかっただろうと思うのです。

つまり、元々存在していた潜在的な日本ファンが「小松拓也」という日本人タレントの需要を生み出したということであり、端的に言えば小松拓也は良くも悪くも「日本人」であったから中国での需要を生み出せたと実感しているのです。

僕が長い中華圏での芸能活動や生活の中で体験して来たことはSNSなどでのファンとの交流にとどまりません。

中国人の友人や仲間と会話をしていて日本のアニメや漫画の話で盛り上がる中国人をこれまで無数に見て来たし、日本のアニソン歌手や声優さんをお招きするイベントの司会やゲストにも多数参加をして来ました。

 

中には来場者が数日で100万人を超えるような巨大なアニメフェスに参加をすることがありましたが、そういった現場では多くの熱烈な日本のアニメファンの姿を目撃してきました。

驚くことにそういったファンの中には一度も日本へ渡ったことがないにも関わらず、日本のアニメが好き過ぎて独学で日本語を勉強して、ほとんど問題なく日本人と日本語で交流が出来るレベルの中国人も数多く存在しているのです。

 

だから中国語を全く話すことの出来ない日本の歌手や声優が日本語でMCをしてもほとんどの聴衆が日本語を理解しているばかりか、日本語で沢山の声援が現場に飛び交うわけです。

そして僕は中国で芸能活動や生活を繰り返しているうちにこうした日本コンテンツファンの中国人がいったいどのようにして日本のエンタメコンテンツに触れるようになっていったのかというルーツを知っていくことになるのです。

 

そこに大きく起因しているのが台湾や香港の芸能界だったのです。

 

台湾や香港の芸能人やコンテンツは長い間中国本土の人にとって多大なる影響力を持っていた

芸能界から見る中国市場②!何故中華圏で台湾や香港が重要拠点なのか?日本人が知らない中国事情で説明しているように台湾や香港のコンテンツや芸能人は東アジアにおいて非常に大きな影響力を持っています。

それは中国本土の影響力においても例外ではなく、台湾や香港で流行したコンテンツや有名になった芸能人が中国本土でも後追いする形で人気コンテンツ化していく現象はこれまで度々起こって来たことです。

 

香港の劉德華(アンディ・ラウ)やジャッキー・チェン、台湾の周杰倫などといったスターは中国本土でも本土のスター達以上に強い人気や知名度を誇っており、台湾や香港のスターの格式を本土のスター以上だと格付けしている中国人は決して少なくありません。

 

また、中国人とカラオケに行けば選曲されるほとんどの歌が台湾や香港の歌手の歌ばかりです。

僕はこれまで様々な中国人と様々な地域でカラオケに数え切れないほど行ったことがありますが、中国本土の歌手の歌がカラオケで歌われる頻度は1割ほどしかない実態です。

 

むしろ中国本土の歌手の歌をカラオケで選曲する中国人の方が圧倒的に少ないのです。

 

中国の大学の学園祭やカラオケ大会などにも何度も参加をしてきた経験がありますが、そういった場面などで選曲される歌もほとんどが台湾人歌手が歌う歌ばかりです。

そういった状況を生み出す大きな要因が中国国内の様々な事情と関連していたと推測します。

 

芸能界から見る中国市場③!映画産業から見る中国の世界戦略で詳しく説明している通り、中国は現在自国IP(知的財産権)の開発とブランド化に大きな力を入れています。

その流れは北京夏季五輪や上海万博を経過した2010年以降から特に加速化し、それ以前の「世界の工場」と呼ばれていた頃の中国の在り方とは現在大きく実態や中身が異なるものです。

 

以前の中国はルイヴィトンやシャネル、携帯ならばiPhoneやサムスンなど、中国国内の工場で主に生産するものは他国ブランドや他国メーカーの商品である割合が高く、自国ブランドの開発やIP化には見劣りが生まれてしまっていた状態でした。

ですが国の政策が変わり、中国ブランドのテコ入れに政府が本気を入れ始めた近年、その状況は急速に変化しています。

HUAWEIなどの中国メーカーの世界においての急速なブランド化や知名度向上、中国映画界の躍進や発展なども中国の「文化創造(IP産業)」の政策に関連して起こっている現象と言えます。

 

これらの国としての変化は中国国内のテレビ番組などのメディアコンテンツの在り方とも深く関連している話です。

かつての中国国内のテレビ番組をはじめとしたエンタメコンテンツはあまりコンテンツとしてクオリティが高くなかったと言えるかもしれません。

 

事実、以前は中国人の若者の多くが中国本土のメディアコンテンツを「つまらないから見ない」と言い放ち、インターネットを通して台湾や香港のテレビ番組を見たり、音楽を聴いたりしていた上に、その割合は相当数に上っていたのです。

中国本土の芸能情報には疎くても台湾や香港の芸能情報には敏感だという中国人は決して少なくありません。

 

つまらなくてダサいと感じてしまう中国コンテンツを見るよりも、洗練されてオシャレでカッコいいと感じる台湾や香港の芸能人やエンタメコンテンツに憧れや興味を抱く中国の若者はかつて非常に多かったのです。

(近年の中国エンタメコンテンツはかなり面白くなり、大分洗練されて来た為、最近の若者は中国コンテンツを見る人も格段に増えるなどその状況は変わって来ています。)

 

しかも台湾ならば中国本土と同じく北京語を共通言語としているので中国本土の若者は違和感なく台湾のテレビ番組やコンテンツを見たり聞いたり出来ます。

香港は広東語圏ですが、中国本土でも深センや広州などは同じく広東語圏ですし、台湾や香港などの番組は中国語字幕が記載されるのがスタンダードです。

北京語にせよ広東語などの方言にせよ、発音は違えど漢字表記すれば意味は全く同じ為、字幕がついてしまえば視聴者にとっては関係ありません。

こういった背景があり、中国本土の大部分の若者にとって最も身近に向き合って来たコンテンツはほんの数年前まで台湾や香港のエンタメコンテンツであった!という奇妙な現象が発生し続けていたのです。

 

これが中国本土で台湾や香港の芸能人が圧倒的知名度や人気を誇る大きな要因であり、カラオケでは台湾人の歌が特に多く歌われることになっている深い原因です。

また、中国はその国土の広さや地域間における風土生や文化の違いから日本のように必ずしも全国各地で同時期に似たような流行やブームが起きにくい土壌です。

北京や上海などの都市部で流行ったドラマが一年後に後追いして地方で流行るなどの現象が起きることもあります。

 

また人口が多い為、日本以上に情報が溢れることで情報の分散化が起こりやすく、多くの情報は人目につくこともなく埋もれてしまいます。

加えて情報規制があるので日本のエンタメなどの各種情報は台湾や香港に比べると満遍なく伝達することがほとんど起こらないのです。

だからこそ中国人が長年最も注視して来た台湾や香港の芸能界やエンタメコンテンツを介して間接的な形で日本の情報が中国本土へ伝達していくということに大きな意味合いがあるのです。

 

(この記事の続きは芸能界から見る中国市場⑤!爆買いに影響を与えたエンタメの力()をご覧ください。)

 

 

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