本記事は芸能界から見る中国市場⑥!越境ECとライブコマースを深掘り検証()の続きになります。

 

激しく変化する時代の中、今後力を持つのは帯貨能力を備えた人間

芸能人で言えば人気タレントと認知タレントの違い。

KOLで言えば同じフォロワー数を持つKOL同士でも帯貨能力を持つ者とそうでない者。

 

それぞれの前者と後者とでは傍目が同じような人気に感じ取ることが出来てもその中身は全く異なる効果を企業や商品にもたらします。

芸能人が企業広告のイメージキャラクターに起用されるのはタレントの人気やイメージを商品PRや宣伝の相乗効果に繋げることを企業側が考えるからであり、いわば「帯貨能力」がある真の人気タレントでなければ今後は務まらなくなっていく可能性があります。

 

AIやビッグデータの進化に伴い、人気タレントと認知タレントの差異やタレントの「帯貨能力」の有無もデータ化されて管理され始めているからです。

つまりタレントやユーチューバーやインスタグラマーといった人気KOLなどもフォロワーや視聴回数の数値が高いから企業や商品とのマッチングが上手くいくか?というと必ずしもそうとは限らず、より重要視すべきは「帯貨能力」の有無なのです。

 

帯貨能力とセットで考えるべき商品とKOLの属性

企業側が越境ECやライブコマースなどで自社商品を国内外でタレントやKOLを使用して販売しようと考えた際、帯貨能力を持ち合わせる人物かどうかと並行して、商品とタレント(KOL)との属性を重視する必要があります。

 

例えば人気があるものの太っているKOLがいくらダイエットサプリやダイエットグッズの効果を力説しても説得力に欠け視聴者は全く共感しないでしょうし、むしろ反感を抱いてしまい企業やタレントにとってはかえってマイナス効果に繋がってしまいかねません。

どうせならばダイエット成功者の話を聞きたいと通常は思うものです。

 

同様の例としては中国人KOLが日本の化粧品が国内の消費者に人気だからと、資生堂や花王、DHCなどといったあらゆる日本メーカーの化粧品を高級なラインから安価なラインまで片っ端に「この商品は良いですよ」とライブコマースで説明し販売を試みた挙句、消費者からは「結局売れれば何でもいいんだろ?どの商品もいいと説明されても説得力がない」と反感を受け、結果として消費者からの信頼や帯貨能力を減少させてしまうKOLが出現し始めている。

このような状態も生まれているのです。

 

そもそも一本数万円する化粧水と1000円で販売されている化粧水とでは消費者の年齢や所得などにも差異があるわけで、ターゲットやマーケティングを絞ったブランディング戦略のもと取り扱う商品の価格帯や取り扱い方にも気を配る必要が企業やバイヤー、KOLにはあります。

 

オフラインならば一流デパートでしか取り扱われていない商品なのか?それともコンビニやスーパーなど全国どこでも手軽に手に入る安価な商品なのか?などのブランディングが明確に行われていますが、オンラインショッピングのライブコマースに関してはまだこの点のブランディングがオフラインほど構築されていないのかもしれません。

 

その為、可視化しやすいフォロワー数が高いKOLなどに安易な形で商品プロモーションの委託を行なっている日系企業も少なくないようですが、最低限「帯貨能力の有無」と「自社商品とKOLとの属性」には気を配る必要があると考えます。

実はライブコマースを主戦場として活躍している中国人KOLの中には自身の属性を特化させたスタイルでブランディングを始めているKOLが増えています。

以前のように自身の人気にあやかって何でもかんでも販売すれば売れたという時代は終息に向かい、現在は「信用力」が商売や生存の大きな鍵になっていると理解しているKOLが多いのです。

 

だから化粧品ならば自分が実際に使用してみて本当に良かった思える自信のあるメーカー1社の商品に特化して販売したり、あるいは以前ならば総合商社のように化粧品も家電も家具もブランドバッグも売れやすい物ならば何でも売っていたというKOLが中古のブランドバッグに特化した「専門性」のあるネットショップを運営して販売するなどといったスタイルが増加しています。

時代の潮流に合わせてここ数年で一気に世の中へ現れるようになったKOL達も「専門性や属性」をより特化させ、その分野における競争に活路を見出していかなければなかなか簡単には勝つことの出来ない激しい市場が中国には生まれ始めています。

オフラインもオンラインも商売において「信頼」というものは勝敗を左右する上で非常に重要なものです。

 

時代のキラ星のように現れた多くのKOL達も以前のようにただキラキラとして振る舞っているだけでは淘汰されてしまいかねない時代を中国は迎えています。

日本も少なからず似たような道を今後歩んでいくことになるだろうと感じています。

 

帯貨能力を細分化して戦術を練る

商品の帯貨能力を持つタレントやKOLには大きく分けると、専門知識や専門性に自身の属性を特化させることでニッチなファンからの支持を集めるKOL(専門特化型と定義)と、自分が好きな人物が発信する情報ならば何でも欲しくなってしまうとファンに思いを抱かせるようなカリスマ的影響力を持つKOLとが存在します。

 

前者は前述した通り専門性を「信頼や安心」という武器に変え消費者の支持を集めているのに対し、後者は芸能人(もしくはKOL)としての人気が絶大であるがゆえに熱烈なファンが芸能人に纏わる情報や商品を自発的に購入するような現象を生んでいます。

後者の代表格はミュージシャンなどに多く、人気ミュージシャンが販売するTシャツやバッジ、写真集や文房具、タオルなどといったコンサートグッズは大きな収益源になっているといいます。

多くのアムラーを生んだ安室奈美恵さんのような突出したアーティストともなれば、彼女の使用しているメイク道具やファッションを真似するファンも続出するなど、その影響力は計り知れないエネルギーを持つことになります。

 

これはタレントだけでなくコンテンツに関しても同様で、「君の名は」のようなキラーコンテンツともなれば劇中のモチーフとなった土地やレストランなどに大勢のファンが聖地巡礼で赴いたり、消費したりする現象を生みます。

 

こういったカリスマ的人気のある芸能人やKOL、もしくはコンテンツを本記事では「カリスマ型(仮称)」と定義することにします。

当然、「カリスマ型」と「専門特化型」とは共に帯貨能力を抱いているものの、その中身は大きく異なり、それぞれには異なったブランディング戦略が必要と考えます。

 

越境ECやライブコマースでコンテンツやKOLを用いた販路拡大を目指す企業の皆さんにとって、このような知識は標準装備しておくべき重要な情報であるように思います。

 

帯貨能力を持たないKOLは今後淘汰されるわけではない

ライブコマースが主流になり、中国のKOLの在り方もどんどんと変化している状況ですが、ではライブコマースで帯貨能力が乏しいKOLは完全に淘汰されている状況なのでしょうか?

答えはノーです。

 

帯貨能力を持たないKOLは依然としてライブコマースという物販市場に主戦場を置かず、生配信に来客するファンとトークなどの交流へ力を入れることで投げ銭をもらいながら生計を立てているKOLも存在しています。

 

当然、競争が激化している中で淘汰されるKOLはいるし一時期のように多くの稼ぎを得られずにいるKOLも存在するようです。

ですが資本主義の競争原理が働く中でそれは至極自然な流れであり、また市場そのものの需要があるうちはその市場において活躍の機会を得られるKOLが残り続けることも当然のことなのです。

 

それは日本において巨大資本が必ずしも入っているとは言えないスナックが時代が変わり続けても市場競争に今もなお勝ち残り続けていることとも連動する話です。

SHOWROOM社長の前田裕二さんの著書「人生の勝算」内での言葉を借りるならばKOLの人気の秘密の1つはスナックのママさんのような「KOLと顧客との心の距離感や交流」にあると言います。

 

人間同士は交流をして距離感が近くなってくると相手に心を許しやすくなったり、相手の為に何かをしてあげたいという心理も生まれます。

これがSHOWROOM内で配信をしている無名の一般人ユーザーにファンが生まれる原資となっており、「自分が応援しているこの子の為に何か貢献してあげたい」というファンの思いが「投げ銭」という形でKOLの報酬に結びついている大きな理由だと言います。

 

こういった直接の交流やトークを通して人々の支持を集めて人気が出ているKOLを本記事では「交流型」と定義します。

この原理は「顧客1人1人がプロデューサーとなって自分の応援する女の子を有名にしてあげたいという思いでCDやグッズを購入することがAKBメンバーのポイントと紐付いているAKB商法」や近年話題になることの多い「クラウドファンディング」も全く同質と言えるでしょう。

 

時代は様々なモノやサービスが横並びの形で連なるボーダーレス型に移行している

ちなみにAKBのCDを大量に複数枚購入する人はCDそのもが欲しくて購入しているのでしょうか?

明らかに「CD=モノ」そのものが欲しくて購入するのではなく、メンバーの女の子を応援したいから「モノに対して消費している」わけですよね?

 

この場合、モノに対する専門性や必要性を消費者は求めていませんし、理屈はどうであれ結果として「モノが売れる」という結果を招いた現象が起こります。

ではクラウドファンディングの場合はどうでしょう?

当然、クラウドファンディングにトライする内容や発信者によって大きく異なるでしょうが、クラウドファンディングの場合、応援した場合にもらえるモノやサービスなどといった物質的なリターンが欲しくて出資する消費者もいることでしょう。

 

このように考えた際、「専門特化型」、「交流型」の属性や割合と合わせてビジネスを考えることは非常に重要だと理解出来ます。

AKB商法にせよクラウドファンディングにせよ、「他人(もしくはプロジェクト)を応援したい」という思いが商売の原資に繋がっているビジネスと言えます。

ですが消費者が自分の財産を投下してサービスを購入する目的はそれぞれ異なるのです。

 

これはKOLを使用したライブコマース事業にも当てはまる内容です。

「専門特化型」や「交流型」などと言っても実際はほとんどのKOLがその比率を白黒完全に綺麗に分類出来るわけでも100か0かといった割合で分類出来るわけでもありません。

80:20や50:50、30:70などといった具合にその割合は個人間に応じて異なるのです。

また、自身の強みが専門性にあるのか?人との交流や話術に重きがあるものなのか?などと見極めながらフォロワーとの距離感を築き、ライブコマースに役立てているといったKOLも実在するのです。

 

当然ライブコマースをする上で自分が紹介する商品の知識や専門性に著しく欠けているというのは論外ですが、ある分野の専門知識を備えながらライブ配信で人間味ある交流をフォロワーと交わし、そういった自身の人気を販売成績に繋げているというKOLも少なくないのです。

店員の印象がいいからリピートするレストランやデパートがあるというということはオフラインの生活で往々にしてあることですが、オンラインのサービスでもそれは全く同じことです。

 

「私はこの人からだからこそモノ(サービス)を購入する」

 

ネットの場合、相手の顔や情報の信頼性が見えにくいからこそ、ライブコマースのようなサービスがスタートして相手の顔や情報が可視化出来るようになったことが非常に大きな意味を持ち始めているのです。

 

そして対面式であれば路面店で手売り出来る商品の数に限りがあったのに対し、インターネットならば一度の配信で数万〜数百万人に視聴してもらい、売り上げにレバレッジをかけることが出来る。

このようなサービスがフォーマット化し始めている時代において「人+モノ(サービス)+コンテンツ」といった垣根はボーダーレス化を進めており、人やコンテンツの力がモノの販売力を高めることもあれば、モノの良さが人やコンテンツを逆に引き上げる場合も生まれるでしょう。

 

KOLはライブコマースで言えばいわばデパート売り場の販売員です。

デパート側が教育して優秀な販売員を増やしていく努力も必要でしょうし、逆に優秀な販売員が商品をより多くの消費者へ販売していく効果を狙うことも出来るわけです。

 

ライブコマースが更に市場拡大していく中で「人」と「モノ(サービス)」とをどのように結びつけたブランディングをコンテンツ化出来るか?ということに日本企業の活路があると考えています。

 

むしろライブコマースの市場においては「人とモノ(サービス)」が1セットとしてブランディングを図ることが得策だと個人的には考えています。

日本の化粧品が買いたくて日本のモノを紹介しているKOLのライブコマースを覗きに来た中国の消費者が、最初はモノを見に来たはずなのに結局KOLが好きになり、そのKOLのフォロワーになる。

このようにしてライブコマースを通してフォロワーやファンを次々と増やしているKOLは沢山います。

 

逆にKOLの人気や信用、キャラクターやイメージを利用してメーカーの商品が売れやすくなる。

 

ライブコマース市場において「商品とKOL」との関係はwin×winな関係性であり、互いに多くのメリットを享受し合える関係と言えます。

 

カリスマ型芸能人はライブコマースとの相性が必ずしも良くない

一方でカリスマ型の芸能人はライブコマースとの相性があまり良くないと個人的に考えます。

 

会いに行けるアイドルをコンセプトにしたAKB48であれば毎日のように生配信を行ってもブランディングに影響を及ぼすことがありませんが、例えば木村拓哉さんや福山雅治さんが毎日生配信を行ったら彼らの一部のファンは幻滅してしまうのではないでしょうか?

有名人の中には滅多に会えないからこそ余計にその存在感の凄さや価値観を第三者に与えている類の方々が存在します。

それはシャネルなどの高級ブランドのバッグがデパートや専門店以外では販売されず、バーゲンなどを一切行わないことでブランド価値を下げない努力をしていることと同様です。

 

所属プロダクションがカリスマ型芸能人をライブコマースに使用することはまずないでしょう。

他方でカリスマ型KOLはテレビや映画、コンサートなどを主戦場にしているカリスマ芸能人とはブランディングが異なる為、ライブコマースとの相性も悪くありません。

 

大事なのは人やモノやサービス、コンテンツなどの垣根がボーダーレス化している時代だからこそ、互いにwin×winの関係を構築するやり方や方向性を模索していくということなのではないでしょうか?

 

そして様々な切り口がある中で、自分だったらどのような相手と組み、どのようなブランディングを行うのが得策か?としっかり見極めていくことだと思います。

(この続きは芸能界から見る中国市場⑥!越境ECとライブコマースを深掘り検証()からご覧下さい。)

 

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